大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和25年(う)622号 判決

先ず職権をもつて原判決の理由を検討するに原判決は被告人は鉄工業を営み金属製品の製作販売を行うものであるが別表記載の通り平野化学工業会社外数名間の取引について三十三回に亘り合計金二十四万千五百円の取引金額を領収しながら其の都度法定の取引高税印紙等を消印せず且つ取引の相手方に交付しないで故意に取引高税二千四百十五円を逋脱したものである旨事実を認定し法律の適用として右取引高税印紙等を消印しなかつた所為は取引高税法第十三条第一項に、消印した取引高税印紙等を相手方に交付しなかつた所為は同法第十三条第二項に違反するとして、それぞれ前者に対し同法第四十一条の、後者に対し同法第四十四条の所定罰金を併科している即ち原判決は被告人が判示取引金額領収の都度取引高税法第十三条第一項により取引高税額に相当する金額の取引高税印紙又は証紙に消印しなければならない義務に違反してこれに消印しなかつた所為と、右消印した取引高税印紙等を同条第二項により取引の相手方に交付しなければならない義務に違反した所為とを各独立に認定し、それぞれこれを別罪とし、各罪に対する罰条の罰金刑を併科したものである。然しながら取引高税法第十三条第二項は同条第一項により消印せられた取引高税印紙等を取引の相手方に交付しなければならないと規定する条文の文言解釈からしても同項の違反が成立する為めには消印した取引高税印紙等の存在が前提されなければならない。即ち犯罪の客体として消印せられた取引高税印紙等の存在することが犯罪構成の要素と見なければならないのである。之を実質的に考察しても法が取引高税の納税義務者に対し単に所定印紙等に消印する義務だけを課したのでは同義務の誠実な履行を確保する所以ではないとして取引の相手方に消印した印紙等の実物を引渡して其の義務履行を実証せしめることによつて納税義務者の義務履行を取引の相手側の監視に付しもつて消印即ち納税義務を外部的拘束をもつて促進する効果を狙つたのが右第二項の規定であるとすれば、同項は第一項の法益を保護し、確保する為めの従属的規定として前項の消印行為に附随しその事後行為としての引渡義務を規定したものと解するのが前記法の目的に過不及なく妥当するものと認められる。若し原判決のように右第一、二項間の右のような関連を否定し第一項の規定により印紙等に消印しない納税義務者に対して同項違反罪の外常に第二項の違反罪が併立するものとすれば法が第一項と第二項とに区別して各別の構成要件を具える別個の違反罪を規定し且つこれに対する法益の軽重により法定刑の内容を異にする各別の罰条を配置した法技術の体制を混乱せしめるものであつて、以上何れの理由からしても原判決の思考に賛することが出来ない。

よつて原判決が、被告人の同判示行為につき消印違反罪の外に消印した印紙等不交付罪を認定し後者につき取引高税法第十三条第二項第四十四条を適用し罰金五百円に処したのは罪となる事実を不法に認定して法律を適用し刑罰を科した違法があり破棄を免れない。

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